Little AngelPretty devil 
       〜ルイヒル年の差パラレル 番外編

    “神でも鬼でも あるよなないよな”
 



京の都はその周縁を城塞のように山の連なりで囲うた盆地であるがため、
山肌を上り下りする気流の熱の上がり下がりの影響ももろに受け、
夏は蒸し暑くて冬は極寒の地であったりするのは、
もはや何度もご紹介したのでご存知だろう。
この夏も災害級の酷暑に襲われ、
都に住まう人々はそれなりの工夫でしのいだものの、
遠地の農地や海沿いの里などでは
その災害級の干ばつやら突発的な大雨などなどに襲われて、
秋の実りにも大なり小なり影響が出ているとの報告が
所領を持つ権門へもせわしく届いたようで。
穫れぬものを出せと理不尽非情なことを言うよな所領主も後を絶たないらしかったが、
少なくとも金の髪した誰か様が知る範囲のうちに居ったれば。
知られてしまったが身の不幸、

『おやこれは希有(けぶ)なこと。
 周縁の田畑ではろくすっぽ稲穂が肥えなんだというに
 何でそちらからはそうまで豊かに収穫できたのだろうかの?』

吾も様々に天候気候を学び、それなりの卜占も施してその末で見越した結果、
これは致し方がありませぬなと、神祓官様とも納得し合い、
帝様へも畏れ多きことなれどと奏上するつもりでおりましたのに。
はて、そちら様ではどのような奇跡が起こりましたやら。
白々しいほどキョトンとしつつ、
されど鋭き眼光で睨み据え、
実は 地元の民らから
明日の飯まで残さぬほどもの過酷な搾取をしたことくらいお見通しなんだよ、ごらと。
聞こえない声ですさまじい圧迫と共に脅しを利かせた上で、
上納されたものは国庫に収めなされとその場は咎めなしとしつつ、
ただし各地へ監察の徒を送り、結果、困窮の地方だという矛盾した烙印を押してやり、
改めての説明を請うと都の権門らを震え上がらせている模様。

 「そういうのは本来手前の役職じゃあなかろうに。」
 「まぁな。
  だが、一夜で飛んで帰れる便利な使徒らが居るのだ、使わにゃ勿体なかろ。」

皆が集まる広間の居室では、
書生くんや子ギツネ坊やたちがそれぞれに、
小さな手を動かして 半紙を折ったり切ったりし、
人がたや鳥の形の“式神”を大量生産中。
それへと蛭魔が印を切って咒を降らせれば、
あらあら不思議、手の上へ乗るほどの大きさの、
だがしっかと直衣姿の 役人風の人もどきやら、
それを背中に乗せて飛ぶ、そちらはちと大きめのムクドリが現れる。

 「将来的には ふぉとぐらふという証拠が撮れるようにもなるのだが、
  今世でそれは無理な話だから、せいぜい俺の使者が来たという証拠を残してゆけよ?」

 「な、なんか不穏な言い回しがたんと含まれていると思うのは
  単なる ボクの気のせいでしょうか?」

京の都におわす、曲者の神祇官補佐殿といや、
偉そうな権門からこそ気に入らぬとそねまれているものの、
それでも立場が立場であるその上、今帝の気に入りでもあるため、
そんな存在からの進言ともなりゃ、
話の持ってきようによっちゃあ、お家断絶、没落の途を歩むしかない転落もないとは言えず。
それに…直接の罰は食らわずとも、何やら怪しき手管にて呪いを掛けられたりしかねない。
結構由緒ある大権門がするすると凋落し、
跡取りが狂死しただの後家が獣に憑かれただのと、
どこまで本当か まことしやかに囁かれてもいるがため、
はたまた、御曹司の身へと降った咒を解いてもらった顔ぶれも少なくはなくと、
あることないこと、いやいやあることばっかの怖い話も
結構飛び交っている今代の宮廷なればこそ。

  よって、

そういや、珍しい髪色をした都風の衣紋したお人が里外れの塚に立ってただの、
芒色した髪に白い小袖の お狐様の使いの噂が頻繁でだのと、
いかにも誰か様の風貌匂わす話が所領からもたらされるに至り、
申し訳ありませぬと自分から訂正の申し出を為し、
所領の民へも食料の補填をいたしますと訴え出る体たらくを示すものがぼちぼちあるとか。

 「お師匠様は、帝様から体よく使われてるだけだなんて仰せだけれど。」

翼開いた小鳥を折り折り、
風よけにと現れてくださった、そりゃあ頼もしい武神の懐に収まっている書生くん。
特に相槌を打つではないが、和ませた目顔で“それで?”と促され、

 「ご自身がやさしい心遣いで動いてらっしゃるからこその、
  きめの細かい配慮だと思うんだ。」

あえてご自身が影を見たと土地の使いに発言させて、
自分だけ告げ口するよ知ってるよと脅かす悪者になっているところとか、
白々しくも厭味な物言いして見せるとか。

 「ただ、手厚い義援を寄越すだけじゃあダメ。
  ああそうか国庫から振る舞ってくれるんだと思わせるだけじゃあダメ。
  誰が悪いのかを掴んで、びしっと仕置きしなきゃ意味ないって。」

姑息怜悧な輩ほど、悪く傾きゃどんな弊害が及ぶかへの見越しも早いのか、
神祇官補佐に目をつけられたらしいと知るや、うあっと慌てて手を打つらしく。

 『そんな風に目端が利くなら、最初っから真っ当にしときゃあいいもんを。』

そんな風に言って嘲笑う誰か様なのへ、
それってご自身へも大きなブーメランなんじゃあ…なんて


  いやいやいやいや
  思っちゃいませんたら、決してと


大慌てでかぶりを振った、書き手だったのは此処だけの内緒。





 
     〜Fine〜  18.11.28


 *急に冷えて来たかと思えば、昨日なぞ20度以上あったとか。
  初夏からこっち、いやさ春からか?
  なんかおかしいばかりな平成最後の一年でしたね。
  この冬は暖冬とのことですが、
  それもどうだろうかと、油断はならないぞなんて
  妙に警戒しまくってるもーりんです。

i-nanten.jpg めーるふぉーむvv 

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